火山との共生

洞爺湖有珠山ジオパーク

火山の迫力、自然・文化・食べものを楽しむジオパーク

洞爺湖有珠山ジオパークは、洞爺湖を中心としたジオパークです。北海道の地図を見て、ドーナツのような形を探してみてください。北海道の南西部に、直径10㎞程のドーナツ型の湖が見つかるでしょう。それが洞爺湖です。周囲を壁に囲まれて、まるで大きな鍋のような独特の景色が広がっています。今から約11万年前に起こった巨大な噴火の跡にできた窪地に、水が溜まってできた湖です。このようにしてできた湖を「カルデラ湖」と言います。

洞爺湖の中央部には、中島という無人島があります。中島は、大小様々の山がいくつも集まってできています。この中島も、約5万年前に繰り返し起こった噴火によってできた地形です。形は様々ですが、地下から押し出された溶岩が固まってできた山で、「溶岩ドーム」とよばれるものです。

洞爺湖の南側には、有珠山があります。今まさに活動している火山で、噴気が立ち上り、むき出しの岩や荒々しい噴火の跡から、火山の迫力を感じられます。この有珠山は、1663年以降、明らかになっているだけで9回、20世紀だけでも4回(1910年、1944-45年、1977-78年、2000年)の噴火を起こしました。ですから、有珠山の山頂付近や麓では、くり返される噴火によってできた多くの噴火口を見ることができます。

約11万年前 大噴火
巨大火砕流発生 洞爺カルデラが誕生
洞爺湖ができた
長い年月をかけて水がたまった
約5万年前 中島誕生
湖の中央でくり返し噴火があった
約2~1.5万年前 有珠山誕生
何度も噴火して有珠山ができた
約1万年前 岩せつなだれ
有珠山がくずれて海に流れ込んだ
約1万年前 洞爺湖周辺に人が
石器を使っていた
縄文文化が栄える
ムラや貝塚が作られた
アイヌ文化が栄える
1663年 山頂噴火
有珠山が長い眠りから覚め噴火
17世紀末 古文書記録がない噴火
1769年 山頂噴火
オガリ山の誕生
1822年 山頂噴火
小有珠の誕生
1853年 山頂噴火
大有珠の誕生
1910年 山麓噴火
明治新山(四十三山)の誕生
1943-45年 山麓噴火
昭和新山の誕生
1977-78年 山頂噴火
有珠新山の誕生
2000年 山麓噴火
西山山麓・金比羅山付近に多数の火口

洞爺湖有珠山ジオパークの最大の特徴は、人々がこの活火山のすぐ近くで暮らし続けてきたということです。時には町の中に火口や断層ができ、新しい山が誕生したこともありました。過去の噴火は様々な災害をひきおこし、人々の暮らしに影響を与えてきました。この災害の記憶を風化させないために、噴火による被害を受けた建物や道路などを丸ごと「災害遺構」として保全し、見学できる散策路にしています。

2000年噴火

2000年の噴火は山麓で発生した。国道や住宅のある場所だったが、 噴火の兆候をいち早く捉えたことで、住民の事前避難が成功し、 噴火による直接的な犠牲者はいなかった。

…でも、なぜ火山の噴火が起こる場所で人々は暮らし続けているのでしょう?

有珠山の麓には、湧水の出る場所が多く、約1万年前から人が暮らしていたことが、考古学の研究で明らかになっています。また洞爺湖周辺の火山灰によってできた平らな台地は、日当たりの良い良好な耕作地帯や果樹園として利用されてきました。そして1910年の噴火がもとになって誕生した洞爺湖温泉は、年間70万人が訪れる北海道有数の温泉観光地です。これらは全て、火山の恵みです。

海の生き物と火山も関係があります。1万年程前に起こった、有珠山の山崩れ【岩屑(がんせつ)なだれ】は海まで達し、海岸を入り組んだ地形にしました。岩の隙間は貝やカニ、タコ等、海の生き物にとって格好の住みかになっています。これもまた火山の恵みです。火山から、これらの様々な恵みを得られることが、人々がここで暮らしている理由です。

この地域では、今後も火山との共生を考え続けていかなくてはなりません。これからも人が暮らし続けていくためには、噴火災害への備えが必要です。火山をよく知り、自然災害や防災について語れるガイドが案内するツアーは、この地域の大きな特徴であり、ユネスコ世界ジオパークとして評価を受けているポイントです。火山が作った景色を楽しみ、おいしい火山の恵みを食べ、温泉に浸かって、私達が暮らす地球そのものに思いをはせる。それが洞爺湖有珠山ジオパークの楽しみ方です。

どうして火山は噴火するの?

日本には110の活火山があり、そのうちの20火山が北海道にある。洞爺湖有珠山ジオパークにある有珠山は、20~50年に一度、噴火をくりかえす活火山として知られている。また、洞爺湖も過去の火山活動で形成されたカルデラという火山性の窪地に水が溜まってできた湖である。ではなぜ日本にはこんなにたくさんの火山があり、どうして火山は噴火するのだろうか。

日本列島に火山が多い理由は、地球の表面を覆うプレートの活動に関係がある。日本列島付近では、海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込んでいる。日本列島の地下では、沈み込んだ海洋プレートの上部から水が絞りだされる。この水の働きでマントルの岩石が溶け、マグマができる。マグマは周囲の岩石よりも密度が小さいため、浮力で地中を上昇する。上昇したマグマは日本列島の下でマグマだまりを作る。

軽石が噴出する噴火のしくみ

水蒸気噴火のしくみ

1977年8月7日、有珠山は大量の火山灰や軽石を上空12,000mまで噴き上げる噴火を起こした。このような噴火はプリニー式噴火といい、何かのきっかけで、地下のマグマだまりに溶けていた水や二酸化炭素などの火山ガス成分が発泡し、その力で噴火すると考えられている。よく振った炭酸飲料のボトルの口を開けて減圧させると、一気に発泡し吹き出る様子を想像してみよう。多くの火山の噴火は、このようなマグマの発泡によって生じる。軽石を観察すると、小さな穴がたくさん見える。この穴はマグマが発泡した痕跡なのだ。

2000年の有珠山噴火では、その時のほとんどの噴火は、水蒸気噴火だった。マグマ由来の物質を噴出しない噴火だ。地下から上がってきたマグマの熱が、その上にある地下水を加熱し、水蒸気の圧力が高まり噴火が起こった。やかんでお湯を沸かした時、急な沸騰でお湯が噴き出す状況を想像してみよう。2000年の噴火では、たくさんの噴石が住宅や道路にふりそそいだが、これは地面を構成していた岩石が吹き飛ばされたものだ。

火山のジオパークを訪れる時には、景色だけでなく、足元の岩石も良く見てみよう。軽石ひとつからでも、マグマが発泡する様子が想像でき、火山の活動を感じられるだろう。

※このコラムでは、噴火のメカニズムの一例を紹介した。地球上の火山には、まったく異なるメカニズムで活動している火山も多数ある。


「洞爺湖有珠山ジオパーク」(著者:洞爺湖有珠山ジオパーク推進協議会 加賀谷にれ、北翔大学准教授 横山光)及び「どうして火山は噴火するの?」(著者:北翔大学准教授 横山光)は、『北海道博物館第2回特別展 ジオパークへ行こう!展』図録より、著者の許諾を得て一部訂正したものである。

日本に火山が多いわけ

日本列島は世界でも有数の火山活動が盛んな場所です。図は日本の活火山の分布を表しています。活火山が列になって分布しており、その列は海溝と平行であることに気付きます。実は、日本列島は4つのプレートが、ぶつかり合う場所で、海溝はプレートの沈み込む場所なのです。プレートが沈み込むと、海底の水をたっぷりと含んだ堆積物が深い場所に引き込まれ、地下の圧力によって水分が絞り出されます。絞り出された水分が日本列島の地下にある高温のマントルをつくる岩石に混ざることで、岩石がとけてマグマができるのです。とけたマグマはまわりの岩石より軽く、地上に向かって上昇し、噴火を引き起こすのです。これが、日本に活火山がたくさんある理由なのです。


※図は地理院タイル(色別標高図)を加工して作成した。また、海域部の地形は海上保安庁海洋情報部の資料を使用して作成した。